
キュービクルは高圧受電設備として、多くの工場やビル、商業施設、病院などで使用されているものです。新品のキュービクルは高額であるため、コストを抑えるために中古品を導入するケースも増えています。しかし、中古のキュービクルを選ぶ際には、安全性や耐用年数、法規制の適合状況などを慎重に確認する必要があります。
特に、古いキュービクルの中にはPCB(ポリ塩化ビフェニル)を含む変圧器やコンデンサが搭載されているものもあるため、適切な知識を持って選定しないと、思わぬリスクを抱えることになります。本記事では、中古キュービクルの選び方と、安全に使用するための対策について詳しく解説していきます。
中古のキュービクルを選ぶ際には、いくつかの重要なポイントを確認することが必要です。主に「設備の状態」「法規制への適合」「保守性」「コストと導入計画」などが重要になります。
中古のキュービクルを購入する前に、設備の状態を入念にチェックすることが重要です。特に、経年劣化が進んでいる設備は故障のリスクが高いため、慎重に選ぶ必要があります。
まず、外観の確認を行い、錆や腐食がないかをチェックします。キュービクルは屋外に設置されることが多く、長期間使用されている場合、雨風の影響を受けて劣化が進んでいる可能性があります。外装の劣化が激しい場合、内部の機器もダメージを受けている可能性が高く、トラブルが発生しやすくなります。
次に、内部の変圧器や遮断器の状態を確認します。変圧器の絶縁油が劣化していると、絶縁性能が低下し、事故につながる可能性があります。絶縁抵抗試験や耐電圧試験などを実施し、適切な性能が維持されているかを確認することが重要です。また、遮断器(VCBやLBS)の接点の摩耗や動作の異常がないかも点検する必要があります。
中古のキュービクルを導入する際には、法規制への適合状況を必ず確認する必要があります。特に、1972年以前に製造されたキュービクルには、PCBを含む変圧器やコンデンサが使用されている可能性があるため注意が必要です。
PCBは人体や環境に悪影響を及ぼす有害物質であり、現在では使用が禁止されています。PCBが含まれる機器を誤って導入すると、適切に処分しなければならず、処理費用が発生するだけでなく、法的な責任を問われることもあります。中古品を購入する際には、必ずPCBを含んでいないことを証明する「ノンPCB証明書」の有無を確認することが大切です。
また、電気設備技術基準やJIS規格などの基準に適合しているかも確認しなければなりません。古い設備では、最新の安全基準に適合していない場合があり、そのまま使用すると事故のリスクが高まります。
中古のキュービクルを導入する場合、今後のメンテナンスや保守が適切に行えるかを事前に確認しておくことが重要です。特に、メーカーがすでに生産を終了した機器や、部品供給が停止している設備を導入すると、故障時に修理ができなくなるリスクがあります。
キュービクルは一般的に15〜20年程度の耐用年数があるとされていますが、すでに長期間使用されている中古品を導入する場合、あと何年使用できるのかを慎重に判断する必要があります。中古のキュービクルを購入する際には、過去の点検記録やメンテナンス履歴を確認し、適切に管理されていたかを確認すると良いでしょう。
また、今後の保守を依頼する予定の電気管理技術者や保守会社に相談し、対応可能な設備かどうかを確認することも重要です。設備の種類によっては、専門の技術者でないと対応できないものもあるため、導入前に十分な情報を集めることが求められます。
中古のキュービクルは新品と比べてコストを抑えられるのが大きなメリットですが、導入後に追加のコストが発生する可能性も考慮しなければなりません。例えば、設置工事費用や、点検・補修費用が発生することがあるため、トータルのコストを考えて導入を決定することが重要です。
また、キュービクルは一度設置すると簡単に交換できるものではないため、長期的な運用計画を立てた上で導入を検討する必要があります。中古品を導入する場合、できるだけ状態の良いものを選び、必要に応じて補修を行いながら、安全に使用できる環境を整えることが大切です。
中古のキュービクルを導入した後も、安全に運用するためには定期的な点検やメンテナンスを欠かさないことが重要です。
まず、法令に基づいた定期点検を実施し、異常がないかを確認することが必要です。絶縁抵抗試験や遮断器の動作試験、油分析などを定期的に行い、機器の状態を把握するようにします。また、外部からの異物侵入や錆の発生など、設置環境による劣化も考慮しながら、適切な管理を行うことが求められます。
万が一、異常が発生した場合は、早急に修理や部品交換を行い、安全な状態を維持することが重要です。特に、高圧設備は事故が発生すると大きな被害を引き起こす可能性があるため、早めの対応が求められます。
また、保守契約を結び、専門の技術者に定期的な点検を依頼することで、安全性を確保することができます。中古のキュービクルは、新品と比べてトラブルが発生しやすいため、日常的な管理を徹底し、問題が発生する前に対策を講じることが重要です。
中古のキュービクルを選ぶ際には、設備の状態や法規制の適合状況、保守性、コストなどを総合的に判断し、安全に使用できるかどうかを慎重に確認することが重要です。適切な点検やメンテナンスを行いながら、安全な運用を心がけることで、コストを抑えつつ安定した電力供給を実現できます。