キュービクルとは

キュービクルとは

キュービクルとは

 

キュービクル(cubicle)は、日本では主に高圧電気設備を収容する「高圧受電設備」の一部として使用される閉鎖型の金属製の箱(またはスペース)を指します。日本のビルや工場、商業施設などで一般的に設置され、効率的な電力供給や安全性の確保に重要な役割を果たしています。

 

1. キュービクルの定義と概要

キュービクルは、高圧受電設備を収容し、配電システムを管理するための金属製の箱型設備のことを指します。電力会社から供給される高圧電力(通常は6600ボルトなど)を建物内で使用可能な低圧(200ボルトまたは100ボルト)に変換するためのトランスや遮断器などの装置が含まれています。工場や商業施設、病院、テナントビルなどでは50kVA以上の高圧受電が必要な場合、高圧受電設備が必要とされ、電気の安定供給と安全を確保するために不可欠です。

 

2. キュービクルの役割

キュービクルは、高圧電力を効率的かつ安全に使用するために必要な設備です。以下にその主な役割を紹介します。

 

電力の受電

電力会社から提供される高圧の電力をキュービクルに引き込み、キュービクル内で低圧に変換します。これにより、建物全体で安全に電力を供給できます。

 

電力の変圧

キュービクル内に設置されたトランス(変圧器)によって、高圧電力を建物内で利用可能な低圧に変換します。例えば、6600ボルトを100ボルトや200ボルトに変圧します。

 

過電流や短絡の防止

キュービクルには過電流や短絡が発生した際に電流を遮断するための遮断器やヒューズが設置されています。これにより、事故や設備の損傷を防止します。

 

雷の影響を防ぐ

落雷などにより生じる高電圧から設備を保護するために、避雷器が設置されています。これにより、落雷による電圧上昇が建物内の機器に及ばないようにします。

 

3. キュービクルの構造

キュービクルは通常、金属製のケースで密閉されており、その内部には各種の電力設備が収められています。一般的なキュービクルの構造と各部分の役割について以下で解説します。

 

受電部

電力会社からの高圧電力を受け入れる部分です。高圧配電線をキュービクルに接続し、電流を供給するための接続端子が含まれます。

 

遮断器(VCB・LBS等)

過電流や短絡が発生した場合に電流を遮断するための装置です。安全性を確保し、機器が損傷するのを防ぎます。

 

トランス(変圧器)

受電した高圧電力を低圧に変換するための装置です。高圧(6600ボルトなど)を低圧(100ボルトまたは200ボルト)に変圧することで、建物内の各設備が使用できるようにします。

 

配電部

変圧された低圧電力を建物内の各エリアに分配するための設備です。ここには配線用遮断器や漏電ブレーカーが設置され、建物内の各回路へと安全に電力を供給します。

 

避雷器

落雷によって発生する過電圧から機器を守るための装置です。雷サージが発生した場合に電圧を逃がし、機器が損傷しないように保護します。

 

4. キュービクルの設置に関する法規制

日本では、キュービクルの設置に関して様々な法規制があります。これは主に電気事業法や電気設備技術基準によって定められています。例えば、以下のような要件が設けられています。

 

設置場所の確保

キュービクルは屋外または屋内の専用スペースに設置される必要があります。これは、高圧設備であるため、火災や感電などの危険性を考慮した設置場所の確保が求められます。

 

メンテナンスと定期点検

キュービクルは定期的な点検が法律で義務付けられています。これには、受電設備の検査や清掃、絶縁状態の確認などが含まれます。安全性の維持と電気事故の防止のため、専門性を有した主任技術者による定期的なメンテナンスが必要です。

 

技術基準への適合

設置するキュービクルは、電気設備技術基準に適合することが求められます。この基準は設備の構造、耐久性、安全性についての要件を規定しています。

 

5. キュービクルの種類

キュービクルには用途や設置場所によっていくつかの種類があります。以下は主な種類です。

 

屋内型キュービクル

屋内に設置するタイプで、主に建物の内部に置かれるため、天候の影響を受けにくいです。騒音の発生が少なく、環境に配慮した設計がされています。

 

屋外型キュービクル

屋外に設置するタイプで、防水性能や防錆処理が施されています。気候条件に対応するため、雨や風に耐える構造が特徴です。

 

ユニット型キュービクル

各設備をユニット化し、必要に応じて追加や変更が可能なタイプです。小規模施設から大規模施設まで対応でき、将来的な拡張にも柔軟に対応できます。

 

6. キュービクルの設置のメリットとデメリット

キュービクルの利点としては、以下の点が挙げられます。

 

スペースの節約

設備がコンパクトにまとめられているため、比較的少ないスペースで設置可能です。特に都市部のビルや工場などで、省スペースでの電力供給が可能になります。

 

安全性の向上

高圧設備が密閉されているため、誤って触れることによる感電事故を防止します。また、火災のリスクを軽減し、全体的な安全性を向上させます。

 

設置・メンテナンスの容易さ

キュービクルはユニット化されており、設置が比較的簡単です。また、メンテナンスも容易で、定期的な点検を行いやすい構造です。

 

デメリットとしては、以下の点が挙げられます。

 

初期費用の高さ

キュービクルの設置には高い初期費用がかかるため、小規模な事業者にとっては負担になる可能性があります。

 

専用の設置スペースの必要

設置場所や設置スペースの確保が必要なため、特にスペースが限られる場所では導入が難しい場合があります。

 

7. まとめ

キュービクルは、日本のビルや工場、商業施設などにおいて安全で効率的な電力供給を実現するために重要な設備です。高圧電力を低圧に変換し、安全に建物内に電力を供給することで、電力の安定供給と安全性の確保に寄与しています。また、電気設備技術基準に従って設置・管理されることで、電気事故のリスクを最小限に抑えています。

 

キュービクルの設置には高い初期費用がかかるものの、安全性の向上や省スペースでの設置が可能な点から、多くの施設で導入されています。