
工場やビルなどで高圧受電を行う際に使用される「キュービクル式高圧受電設備」。この設備に搭載される変圧器(トランス)の容量は、施設の電気使用量に応じて適切に選定する必要があります。過小でも過大でも設備コストや電力契約に悪影響が出るため、慎重な設計が求められます。
本記事では、キュービクル容量の決定方法について、実務に沿った形で詳しく解説します。
キュービクル容量とは、内部に設置される変圧器の容量のことで、単位はkVA(キロボルトアンペア)で表されます。この容量が小さすぎると、必要な電力が供給できず、設備の誤作動や遮断器のトリップが起こる原因になります。逆に容量が大きすぎると、トランスの効率が落ちて無駄な電力損失が増えたり、契約電力が過剰になって基本料金が高くなったりします。
適正なキュービクル容量を設定することは、安全性・経済性・将来性を確保するうえで非常に重要です。
キュービクル容量の決め方は、以下の3つのステップで構成されます。
まず、施設内にあるすべての電気設備の消費電力を把握します。たとえば、空調機器、照明、パソコン、コピー機、製造用機械、エレベーター、給湯器など、電気を使用するものはすべてリストアップし、それぞれの定格消費電力を調べます。
消費電力は「kW(キロワット)」で表示されることが多いですが、一部の機器では「VA(ボルトアンペア)」や「A(アンペア)」で記載されている場合もあります。その場合は変換して合計消費電力を算出します。
すべての機器が常時同時に稼働するわけではないため、「同時使用率(負荷率)」を設定します。一般的なオフィスビルや商業施設では60〜80%、製造工場などでは70〜90%程度が目安となります。
たとえば、合計消費電力が40kWの設備で、同時使用率を70%とした場合、実質的な必要電力は28kWになります。
この時点で、今の設備で実際に必要となる電力の大まかな規模が把握できます。
次に、力率を加味して変圧器の容量(kVA)を決定します。力率とは、電力の効率を示す数値で、一般的な施設では0.85〜0.95程度であることが多いです。
必要な容量(kVA)は、「実際に必要な電力(kW)」を「力率」で割って求めます。たとえば、実質必要電力が28kWで、力率を0.9とした場合、28kW ÷ 0.9 = 約31kVAとなります。
さらに、突発的な負荷増や機器の起動時の電力変動に備えるため、安全率(通常1.2〜1.5倍)をかけて、最終的な容量を決定します。この例で安全率1.3倍とした場合、31kVA × 1.3 = 約40kVAが必要な容量となります。
実際に容量を選定する際には、単純な計算だけでなく、いくつかの現場的な視点が重要になります。
高圧受電契約を行う場合、電力会社との契約で「契約需要」(契約電力)が定められます。この契約電力とキュービクルの容量が合致していないと、契約違反や過大請求、供給停止などのトラブルになる可能性があります。
事前に電力会社との打ち合わせを行い、契約内容と容量設計の整合性を必ず確認しましょう。
変圧器(トランス)の容量は、規格化された数値で製造されており、一般的には30kVA、50kVA、75kVA、100kVA、150kVA、300kVA、500kVA、1000kVAなどのラインナップがあります。
たとえば計算上で40kVAが必要だったとしても、50kVAの製品を選定するのが一般的です。無理にピッタリの容量にこだわらず、余裕をもたせた構成が望まれます。
新築や設備更新時には、将来的な増設を見込んで若干多めの容量を確保しておくのがベストです。後から変圧器を増設・交換するには大きな費用がかかるため、余裕のある容量設計が長期的なコスト削減にもつながります。
ただし、過剰すぎる容量は無駄な基本料金や電力損失につながるので、バランスが大切です。
電気設備の力率が低い場合、必要以上に大きな容量が必要になることがあります。このような場合は「力率改善コンデンサ」などの補助機器を導入することで、より小さな容量で十分な電力供給が可能になります。
また、突入電流が大きい機器(モーターなど)を使用している場合は、起動時の電圧降下を避けるためにも、やや余裕のある容量設計が求められます。
容量選定を誤ると、以下のようなトラブルが発生します。
ここまでの内容をふまえたとしても、キュービクル容量の選定は高度な専門知識と実務経験が必要です。特に、工場など特殊な設備が多い現場では、誤った容量設定が重大な事故や損害につながるおそれがあります。
そのため、実際の設計や導入を検討する際には、以下のような専門家への相談が不可欠です。
また、電力会社との調整も必要不可欠ですので、初期段階から三者(ユーザー・設計者・電力会社)での連携が求められます。
キュービクル容量の決め方は、「設備の電力量を正確に把握し、同時使用率や力率、安全率を考慮したうえで、適正な余裕を持たせて容量を設定する」ことが基本となります。
小さすぎても大きすぎてもデメリットがあり、適切な容量を見極めることが、長期的な電力コストや設備の安定性を左右します。
必要であれば専門業者に相談しながら、安全で経済的なキュービクル容量の選定を行ってください。
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