


ビルや工場、商業施設などに設置されるキュービクル(高圧受電設備)は、建物全体の電気を支える「心臓部」と言える存在です。
しかし、その内部には高電圧(6,600Vなど)が流れており、一度トラブルが起これば重大な事故につながるおそれがあります。
実際に、過去には以下のような事故が報告されています。
これらの多くは、「突然の事故」ではなく、日頃の点検・整備不足が積み重なった結果です。
本記事では、キュービクル事故の主な原因と、日常点検・整備によってリスクを最小化する方法を解説します。
トランスや遮断器、母線、ケーブルなどの内部機器は、長年の使用で絶縁が劣化します。
絶縁が弱まると、湿気やほこりを介してリーク電流が発生し、やがて短絡・発火につながります。
特に、温度や湿度の変化が大きい環境では劣化が早まりやすいです。
屋外設置のキュービクルでは、防水パッキンの劣化や排水孔の詰まりが原因で雨水が入り込みます。
内部の鉄部が錆びたり、絶縁部に水が付着したりすることで、高圧回路が短絡する危険があります。
台風や大雨の後に発生する事故の多くがこのタイプです。
ネズミやヘビ、トカゲ、ゴキブリなどがキュービクルに侵入し、
ケーブルをかじったり、導体間に接触したりして短絡・焼損事故を起こすケースもあります。
これは「アニマルトラブル」と呼ばれ、屋外設置のキュービクルでは珍しくありません。
電気設備では、ボルトやナットのわずかな緩みが異常発熱やアーク放電の原因になります。
温度上昇が続くと絶縁部が焦げ、発火につながることもあります。
これは「熱事故」と呼ばれ、定期点検でのトルク確認が非常に重要です。
ほこりや塩分、金属粉などの導電性物質が堆積すると、
湿気を含んだ際に表面放電(トラッキング)を起こす恐れがあります。
特に海岸地域や工場地帯では、定期的な清掃が不可欠です。
日常点検は、異常を早期に発見し、事故を未然に防ぐための第一歩です。
以下のような項目を定期的にチェックしましょう。
これらは外観だけで判断できるため、電気主任技術者が不在でも管理担当者が確認可能です。
特に、焦げ臭・異音・異常振動などの感覚的サインは、重大事故の予兆であることが多いです。
数値の変化や警報ランプの点灯は、内部の不具合を知らせる“サイン”です。
早めに専門業者へ相談しましょう。
消防法および電気事業法では、高圧受電設備の定期点検を義務づけています。
点検周期の目安は以下の通りです。
定期点検では、次のような作業を行います。
これらの整備は、有資格者(電気主任技術者・電気工事士)によって実施されなければなりません。
4. 点検記録の重要性
事故を防ぐためには、点検記録の蓄積と管理が欠かせません。
これらを記録しておくことで、劣化傾向の早期発見や保守計画の最適化につながります。
また、事故が発生した場合でも、適正管理の証拠として役立ちます。
日常整備において、特に次の3つを意識しましょう。
焦げた臭い、うなるような異音、異常な温度上昇など、
小さな異変が重大事故の前触れであることが多いです。
設備管理担当者だけでなく、経営者や管理者も保守計画に関与し、
点検・修繕費を適正に確保することが重要です。
点検表や管理台帳を整備し、社内で情報共有を行いましょう。
また、現場スタッフへの電気安全教育も定期的に実施することで、
ヒューマンエラーを減らせます。
キュービクルの事故は、「突然起こるもの」ではなく、
ほとんどが小さな異常を放置した結果です。
こうした一つひとつが、やがて火災・停電・感電といった重大事故に発展します。
日頃の点検・整備を継続し、記録を残し、異常を早期に発見する。
それが、電気設備を安全に、そして長く使うための最も確実なリスク対策です。
「小さな点検が、大きな事故を防ぐ」──その意識こそが、最強の安全対策です。
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