キュービクルのトランスとは?

キュービクルのトランスとは?

キュービクルのトランスとは?役割・種類・選定基準をわかりやすく解説


ビルや工場、商業施設などに設置されているキュービクル(高圧受電設備)。
その内部で最も重要な機器の一つが「トランス(変圧器)」です。


トランスは、電力会社から受け取った高圧電力(6,600Vなど)を、施設内で使える低圧電力(200Vや100V)に変換する装置。
まさに、施設全体の電気を“使える形”に整える心臓部ともいえる存在です。


この記事では、キュービクル内に設置されるトランスの役割・種類・選定基準について、初めての方にもわかりやすく解説します。


1. トランスの基本的な役割

電圧を変換して安全に電気を使えるようにする

電力会社から供給される電気は、一般的に6,600V(高圧)。
そのままでは、照明・エアコン・コンセントなどの機器には使用できません。


そこで、トランスが電圧を低圧(200Vや100V)に変換(降圧)し、建物内に安全に電気を供給します。
これがトランスの最も基本的な役割です。


安定した電圧供給で設備を保護する

トランスには、電圧を変換するだけでなく、電圧変動を緩和して機器を守るという役割もあります。
電力系統に瞬間的な過電圧やノイズが発生しても、トランスがクッションのような役割を果たし、設備の故障を防いでくれるのです。


2. トランスの主な種類

キュービクルで使われるトランスには、いくつかのタイプがあります。
それぞれの構造や特徴を理解しておくことで、環境や用途に合った選定が可能になります。


① 油入変圧器(油冷式トランス)


最も一般的なタイプで、内部を絶縁油で満たし、冷却と絶縁を行う構造です。


特徴:

  • 高い耐久性と信頼性があり、長期運用に向く
  • 放熱性能に優れ、負荷変動にも強い
  • 一方で、油漏れや火災リスクに注意が必要


用途:
ビル・工場・公共施設など、比較的大型の受電設備に多く使用されています。


② モールド変圧器(樹脂モールドトランス)

内部のコイルを樹脂で固めた絶縁構造を持つタイプです。


特徴:

  • 絶縁油を使用しないため、火災リスクが少ない
  • メンテナンス性が高く、屋内設置に適する
  • ただし、油冷式に比べて冷却性能がやや劣る


用途:
オフィスビルや商業施設など、屋内設置のキュービクルに多く採用されます。


③ 乾式変圧器(空冷式)

モールドトランスと似ていますが、コイルを樹脂で完全に封入せず、空気で冷却するタイプです。


特徴:

  • 軽量・コンパクトで、省スペースに設置可能
  • メンテナンスが容易
  • 湿度や塵埃に弱く、環境条件に注意が必要


用途:
屋内の小規模設備や一時的な仮設電源などに利用されます。


3. トランス選定の基本的なポイント

キュービクルに使用するトランスは、用途・環境・負荷条件に合わせて慎重に選定する必要があります。
ここでは、実務で重要なポイントを5つに整理して解説します。


① 容量(kVA)の選定

トランスの容量は、接続される機器の合計負荷容量+余裕分(約20〜30%)を見込んで決定します。


たとえば、設備全体の電力負荷が150kVAなら、
→ 200kVAクラスのトランスを選ぶのが一般的です。


負荷率が高すぎると過熱・絶縁劣化を招き、逆に過大容量を選ぶと効率が低下するため、バランスが重要です。


② 冷却方式の選定

  • 屋外設置や高負荷環境 → 油入式トランス(強冷却)
  • 屋内・防火性能重視 → モールド式・乾式トランス


冷却方式は、設置場所の温度条件や通風状態によって最適な方式が異なります。
特に屋上設置の場合は、日射と温度上昇に配慮して冷却性能の高い機種を選びます。


③ 設置環境(屋内・屋外・防爆など)

  • 屋外設置:防水・防塵構造(IP44以上推奨)、防錆塗装必須
  • 屋内設置:換気確保、他機器との離隔距離を遵守
  • 高湿・粉塵環境:密閉型や耐湿・耐塵仕様を選定


トランスは常に発熱するため、通風・放熱のスペースを十分に確保する必要があります。


④ 騒音・振動対策

特にオフィスビルや商業施設では、トランスの低周波騒音(ブーンという音)が問題になることがあります。
防振ゴムの設置や防音パネルの使用、モールド式の採用などで対策を行います。


近年は、低騒音タイプのトランス(低損失設計・磁束制御コア採用)も普及しています。


⑤ 効率・損失(省エネ性能)

トランスは常時電力を消費しており、無負荷損失・負荷損失をいかに低減するかがポイントです。
近年の省エネ基準(トップランナー制度)では、高効率トランスの採用が推奨されています。


初期コストだけでなく、年間の待機電力損失(損失電力量)まで含めて比較検討することが重要です。


4. トランス保守と更新のタイミング

トランスは長寿命機器ですが、経年劣化は避けられません。

  • 油入式:寿命目安 約25〜30年
  • モールド式:寿命目安 約20〜25年


経年劣化によって、絶縁性能や効率が低下し、発熱や異音が発生します。
絶縁油の劣化診断(絶縁耐力・酸価・水分量など)や定期点検を行い、
異常が見られた場合は更新を検討しましょう。


特に、古いトランスはPCB(ポリ塩化ビフェニル)を含む場合があるため、
更新時には法令に基づいた適正処理が必要です。


5. まとめ:最適なトランス選定が設備の信頼性を左右する

キュービクルのトランスは、電気を安全に・安定して供給する要(かなめ)です。
その選定を誤ると、設備の効率低下や過熱、騒音、さらには故障や停電の原因になります。


最後に、選定時のチェックポイントをまとめます。

  1. 電圧・容量が適正か(余裕を持った設計)
  2. 設置環境に合った冷却方式を選んでいるか
  3. 防水・防塵・防錆対策が必要な環境か
  4. 省エネ・低騒音・長寿命の観点を考慮しているか
  5. 法令・安全基準に適合しているか(JEAC・JIS等)


これらを押さえておくことで、トランスの性能を最大限に引き出し、
キュービクル全体の信頼性と安全性を高めることができます。


「どのトランスを選ぶか」が、施設の電力品質を決める。
それほどまでに、トランスは重要な存在なのです。

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