
近年、ビルや工場、商業施設などで多く導入されている「キュービクル式高圧受電設備(以下、キュービクル)」。コンパクトな箱型のユニットに電力を供給・変換するための装置が収められており、場所を取らず、点検や施工の面でも優れた特徴を持っています。
しかしその内部構造や具体的な仕組みについては、意外と知られていません。この記事では、キュービクルの内部の構成機器やその働き、安全機能などについて、初心者の方にもわかりやすく解説します。
キュービクルとは、工場やオフィスビルなどで使用される高圧受電設備の一種で、高圧(通常6600V)の電力を受け取り、施設で使用できる低圧(100Vや200V)に変換する装置です。
キュービクルという言葉は英語の「cubicle(箱型の部屋、小部屋)」に由来し、すべての設備を金属製の箱(筐体)に収めて屋外や屋上に設置できる点が特徴です。
かつては建物内部に受電室を設け、壁面に個別に機器を設置する「開放型受電設備」が一般的でしたが、省スペース・工期短縮・コスト削減を目的に、現在ではキュービクル型が主流となっています。
キュービクルの基本的な役割は、以下のような流れに沿って構成されています。
この一連の流れがすべて、1つのボックスに収まっているのがキュービクルの最大の特徴です。
キュービクル内部は、いくつかの主要な機器によって構成され、それぞれが重要な役割を担っています。
ポール(電柱)に取り付けられる機器で、電力会社の送電線とキュービクルを接続する前段階にあります。異常電流が流れた場合に自動的に電路を切り離す安全装置で、受電設備の故障時には外部からの事故波及を防ぎます。
PASとキュービクルを接続するための高圧用ケーブルです。絶縁性能が高く、劣化や漏電を防ぐための二重・三重構造になっているのが一般的です。
負荷がかかった状態でも安全に開閉ができるスイッチです。受電点検時やメンテナンス時に回路を遮断する役割を持っています。
バキューム遮断器とも呼ばれ、異常電流(短絡電流・地絡電流など)が発生した場合に瞬時に回路を遮断します。電力系統に対する保護装置の中核をなす重要機器で、一般的に真空中で遮断を行うため、アーク(放電)による損傷が少なく、長寿命で高い信頼性を持ちます。
高電圧や大電流を直接計測できないため、それぞれ電圧や電流を小さな値に変換して電力量計に送ります。これにより、正確な使用電力量を測定し、契約電力の管理や請求の基準とします。
施設全体で使用されている電力量を計測する機器です。リアルタイムの電力使用状況を把握することで、デマンド制御(ピーク電力の抑制)にも活用されます。
異常電流を検知した際に遮断器に遮断指令を送る装置です。過電流、地絡、短絡などを検出し、回路の保護と事故拡大の防止を行います。これにより、電気火災や機器の破損を未然に防ぐことができます。
キュービクルの中心機器とも言えるのが変圧器です。6600Vの高圧を100Vまたは200Vの低圧に変換し、建物の機器や照明に安全に電力を供給します。乾式と油入式の2種類がありますが、近年は環境性や保守性を考慮して乾式が主流です。
変圧された電力を建物内の各回路へ分配する装置です。各回路ごとにブレーカーが設置されており、過電流や漏電が発生した際には自動的に電気を遮断する役割を果たします。
キュービクルは鋼板やステンレス製の箱型の筐体(エンクロージャー)に、これらすべての機器があらかじめ組み込まれている「ユニット型受電設備」です。
構造は大きく分けて以下のように区分されています。
この3つが箱型に分かれ、それぞれが内部で電線により接続されています。
また、外観には以下のような設備が追加されています。
屋外に設置されることが多いため、耐候性・防水性・防錆性なども重要なポイントです。防水等級(IP等級)や耐震設計なども、現場環境に応じて設計されます。
キュービクルは高圧電力を扱う設備であるため、安全性が極めて重視されています。次のような安全対策が講じられています。
また、電気事業法により、一定規模以上のキュービクルには第三種電気主任技術者以上の有資格者による保守点検が義務づけられています。点検周期や絶縁測定、接地抵抗の確認など、定期的な管理を怠ると重大事故につながる可能性があります。
キュービクルには、以下のようなメリットがあります。
近年では、IoTや省エネルギーの観点から、電力の見える化を可能にするスマートキュービクルや、遠隔監視・自動通報機能を備えたモデルも登場しています。
また、再生可能エネルギー(太陽光・風力など)と組み合わせたハイブリッド電源への対応など、今後もその役割は拡大していくと予想されます。
キュービクルは、高圧電力を安全かつ効率的に建物へ供給するための重要な設備であり、内部には数多くの精密な保護・変換・制御機器が組み込まれています。
その仕組みと構造を正しく理解することで、保守点検や設計時の判断、トラブル対応の質が格段に向上します。導入や更新を検討されている方は、必ず専門業者と連携し、法令と安全基準に従った適切な設計・管理を行いましょう。
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